初心者のためのグランツール観戦ガイド
はじめに
自転車レース、特にプロロードレースは初心者にはとっつきにくい部分がある。テニスやサッカーのように限られた空間の中で展開し、見ているだけでおおよそのルールが把握できるものと違い、自転車レースはルールなどを知らなければ展開の理由などを知ることができない。確かにマラソン同様に長距離を走りきりゴールラインを先頭でまたいだものが勝者ではあるが、そこにはそれ以上に複雑なプロセスが存在する。プロロードレースは実はチームスポーツなのだ。
まずロードレースには2つのカタゴリーがある。まず一つがワンデイ レースと呼ばれる、一日でゴールを迎えるもの、そしてもう一つがステージ レースと呼ばれる最終ゴールまでに複数日かかるものである。
ワンデイ レースは言葉の通り、その日一日で雌雄を決するレースで、最初にゴールラインをまたいだものが勝者である。
ステージ レースとは、名前の通り複数のステージで構成されており、そのステージごとの勝者も決めるが、全てのステージの総合ダイムで一番早かったものが勝者となるのである。その為、ステージで一勝も挙げなくとも、全てのステージで安定した成績を残せば総合優勝することもできるのである。各ステージ終了時点の総合リーダーのことをGC(ジェネラル クラシフィケーション)と表現する。
ステージレースの一ステージ勝利は、ワンデイ レースと同じで、選手たちが目指すものの一つである。特にグランツールでのステージ勝利となれば誰もが目標とするものである。
ステージにはいくつかの種類がある。山岳ステージと呼ばれるアップダウンの激しい峠越えのあるステージ、スプリントステージと呼ばれる平坦なコースでのステージは全選手が同時にスタートするステージである。それ以外に個人タイムトライアル(ITT)と呼ばれる一定距離をいかに個人で早く走るかというステージ、そして同様に一定距離のチームごとの速さを競うチームタイムトライアル(TTT)がある。
グランツール
世界中ではアフリカから南米まで、世界各地でステージレースは行われている。その中でもグランツールと呼ばれるのはたった3つ、そうこれが世界3大レースと言われる世界の自転車乗り全てが憧れる自転車レースの頂点のステージレースなのである。ではその世界3大レースを見てみよう。
ツール ド フランス
まずは誰もが知るツール ド フランスである。世界最大のレースでもあるこのレースは、毎年7月の夏のフランスを駆け抜ける。名物となっているひまわり畑を駆け抜ける光景は外せない夏の風物詩だ。1903年から開催されているこのレースは3週間に渡りフランス全土を駆け抜け、レース期間中には僅か2日間の休みしかない過酷なレースである。山岳ステージなどでは100万人を超える観衆が沿道を埋め、まさに国を挙げてのお祭り騒ぎである。総合リーダーはマイヨ?ジョーヌという黄色いジャージを着用する。
ジロ デ イタリア
ツール ド フランスにも引けをとらないのがジロ デ イタリアだ。こちらも初開催が1909年と古く、毎年5月に催されるこのレースは、古い街並みや歴史的な景観が多く登場し、もっともロマンチックなグランツールと呼ばれている。同じく3週間に渡りイタリア全土を駆け抜けるが、ツール ド フランスに比べ上りも下りもよりきつくなっており、山岳のグランツールとも言える。総合リーダーはマリア ローザと呼ばれるピンク色のジャージを着用する。
ブエルタ ア エスパーニャ
最後のグランツールはもっとも過酷とも言われるブエルタ ア エスパーニャだ。1935年から続くこの大会は、1995年からは開催を8~9月に移し、より過酷なレースとなった。灼熱の炎天下で、乾燥したスペインの大地を駆け抜ける様はもはやサバイバルレースである。山岳も厳しく、タフさが要求されるレースである。スペインはバスク地方など独立をもとめる地域も多く、レース中にその複雑な事情を目にすることも多い。総合リーダージャージは2009年まではマイヨ オロという金色のジャージであったが、スポンサーの変更に伴い2010年からはマイヨ ロホという赤色のジャージとなっている。ブエルタのみ各賞のジャージがスポンサーの変更に伴い変わることがある。
グランツール各賞
グランツールには、ステージ優勝、そして総合優勝(GC)以外にも各種の賞が存在する。選手たちによってはそちらを優先的に狙う選手もおり、選手の特性を評価する上では重要となっている。
・ポイント賞
ポイント賞とは各ステージ内で設定された通過ポイント、そしてゴールラインを越えた順位に対して与えられるポイントで、最も多く獲得したものに与えられる賞である。多くの場合はゴールスプリントで勝利を量産した選手が獲得することが多い。マイステージの通過点では激しい順位闘いが繰り返され、ちょっとした見所になることが多い。ポイント賞はツール ド フランスとブエルタ ア エスパーニャでは緑色のジャージを着用する。ジロ デ イタリアでは赤いジャージを着用する。
・山岳賞
山岳賞は別名KOMとも呼ばれる。コース途中や頂上ゴールに設定されている山岳ポイント、つまりは頂上を通過したものに与えられるポイントである。クライマーが獲得することも多いが、長距離の逃げを決めた選手が着用することも多い。また頂上ゴールはポイントが高いため、最後まで逃げ切ることが出来れば一日でポイントを荒稼ぎできてしまうのも特徴である。総合優勝が山岳で決まることがほとんどなことからしても、総合リーダーが山岳賞も同時に獲得することが多い。山岳賞リーダーは、ツール ド フランスとブエルタ ア エスパーニャでは水玉のジャージを着用する。ジロ デ イタリアでは緑色のジャージを着用する。
・新人賞
これは26歳以下に限定された賞で、26歳以下で総合順位でもっとも上位につけているものに与えられる賞である。ツール ド フランスとジロ デ イタリアでは白いジャージを着用する。
・コンビネーション賞
これはブエルタ ア エスパーニャのみでジャージが存在する賞である。総合、山岳、ポイントのすべての順位を合計してもっともその数字が小さかったものに与えられる賞である。白いジャージを着用する。